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若手研究者海外挑戦プログラムの申請書の書き方【1回目補欠合格→2回目採用の人が語る、短さの中にコアを入れるコツ】

  • 執筆者の写真: 土田 亮
    土田 亮
  • 2020年3月17日
  • 読了時間: 7分

Photo by Nicole Geri on Unsplash



 こんにちは、つっちーです。

 久しくブログ、特に申請書系のことについて手を止めていました。


 私の大学の掲示板で申請書関係の情報を見ていると、学振が実施している「若手研究者海外挑戦プログラム(以下「海外挑戦」と呼びます)」の応募が近々始まるということだったので、「これは書かなきゃ!と思い、書くことにしました。


 以下では、海外挑戦の基本的な情報と書き方のコツの2点について、実際に申請し補欠及び採用した人の目線から紹介していきます。




「若手研究者海外挑戦プログラム」とは?


 学振特別研究員(DC1, DC2, PD)を応募している日本学術振興会が実施・応募している若手研究者(博士後期課程)が海外で行う研究・フィールドワークに必要な研究資金、滞在費、渡航費などを支援するプログラム、それが若手研究者海外挑戦プログラムです。


 一応、学振のページでは、以下のように書いています。


『博士後期課程の学生等が海外という新たな環境へ挑戦し、3か月~1年程度海外の研究者と共同して研究に従事できるよう、100~140万円(派遣国により異なる)の滞在費等を支給し、将来国際的な活躍が期待できる豊かな経験を持ち合わせた優秀な博士後期課程学生等の育成に寄与するプログラムです。』
 (予算の状況により変更されます。)


まあ、読んでわかる通りですね。


 令和2年度(2020年度)分採用の募集要項を見ながら、申請資格や派遣先機関の条件をまとめます。

・申請の資格

 まず、誰がこのプログラムに申請できるのか、という条件について。以下の通りです。

①令和2年(2020年)4月1日現在、我が国の大学院博士後期課程に在籍する者(申請時は見込みでも良い。)
② 申請時かつ採用時において日本国籍を持つ者又は日本に永住を許可されている外国人 
③ 連続して3か月以上、研究のために海外に滞在した経験がない者(申請時において既に研究のために海外に滞在中で、連続して3か月以上海外に滞在する予定の者も申請できません。) 
 なお、令和2年度採用分(第1回)の補欠となった者が、補欠の状態を保持したまま改めて第2回募集に申請することは差し支えありません。

 博士後期課程であることも大事ですが、③の3ヶ月以上研究のために海外滞在した経験がない人、というのも重要な点です。

 なお、僕は1回目で補欠採用されましたが、再度申請できたのは、「なお〜」以降の条件があるためです。


・派遣期間と機関の条件

 派遣期間の条件ですが、派遣開始日から3ヶ月〜1年となります。とはいえ、長くても短くても100~140万(派遣国によって異なる)だから、何だか短い方がお得感が正直否めませんね。まあ、滞在・研究に必要な日数を考えて応募しましょう。

 また、派遣先研究機関の条件は以下の通り。

海外の特定の優れた大学等研究機関。 
なお、次に挙げる機関等は派遣先機関として認められません。
・我が国の大学等学術研究機関が海外に設置する研究所等 
・営利を目的とした民間研究所等

 要するに、日本の大学が作った海外の研究所(技術移転大学もかな)や、企業が儲かるための民間研究所はダメですよってことです。まあ、大概の申請者は大学やその附属研究所に派遣を希望すると思うので、そんなに迷わないと思います。


支給される経費

 これは以下の通り。

・往復航空賃(日本国内の移動分は除く。)
・滞在費(派遣国によって異なる。派遣期間に依らず1件当たり100~140万円) 
・研究活動費(派遣先機関の請求書に基づきベンチフィーを支給。上限20万円)

 研究活動経費の「ベンチフィー」ってなんぞ?と思う人も多いかもしれません(特に文系?)。以下、海外挑戦の遵守事項及び諸手続の手引きより。


本会から研究活動費として支給するのは、「ベンチフィー(bench fee)」に限定しています。
ベンチフィーとは海外の大学に一時的に在籍するために海外の大学側が請求する在籍料(本会において申請書記載の研究計画の遂行に必要と考えられる経費)です。採用者の所属大学と派遣先大学との間で協定等を締結している場合には請求されないこともあります。本会からは、派遣先大学からの請求書に基づき、上限金額を20万円として支給します。派遣先大学から採用者宛の請求書がない場合には支給しません。



書き方のコツは?


 実はこのプログラム、DCと比べて圧倒的に認知度が低いからか、倍率が低いので、よく計画の練られていて、読みやすくわかりやすい申請書を書けば受かる可能性が高いのです。


 だいたい40%くらい(H29〜R1第2回まで入れて)の採択率です。ちなみに、僕が採択されたR2第1回の工学系科学でも11/24人が採択されたので、ほぼ半分ですね。


 そして、DCや他の奨学金や研究資金の獲得書類と大きく異なるのは、ページ数だと僕は思います。そのページ数、たったの2枚!(僕の経験ですが、R1第2回から4P→2Pに変わりました)



 「2枚で何が書けんねん!研究内容や業績や計画とかたくさん書きたかったのに・・・」



 そう思う人も少なくないでしょう。



 だからこそ、無駄な冗長なことは省き、書くべきことはきっちり絞って戦略的に効果的に伝えるしかないのです。


 まず、ベーシックなこと(これはDCにも通じること)ですが、  訊かれている項目通りのことをメインに書きましょう  それが全体の冗長さをなくし、かつページ数を抑える何よりの大前提だと思います。


 もし、P1で文字数が足りない時。その場合、業績のところをめちゃ絞りましょう。本当に必要なところだけ。直近の目覚ましい業績だけ。あとは、その他の論文や活動もおざなりにしてない気持ちを込めて「その他◯報あり」などに留めましょう。



 P2を書きながら思った、重要なポイントとしては、

 ①海外の大学や研究機関でやる意味と自身の研究の紐付け

 ②海外での指導者や研究室の凄さをアピール

 ③どこまで受入準備体制や計画が整っているのか

 の3つだと個人的に思います。


 どれも言わずもがななところはありますが、

 極論、「その先生や研究室の元で申請者は何ができるか、どう貢献できるか」を押し出せば、審査員も「この人は海外の優秀な指導教員・研究室の元ででぜひ頑張ってほしい」と思うのではないでしょうか。


 また、DCより枚数が少ないので、内容を凝縮、また、全体像がわかるような文章やポンチ絵を載せると良いでしょう。僕の場合、それすらも入るのが難しいと考えたため図表は省きました。


​ なかなか情報源がないこの若手研究者海外挑戦プログラム。以下、私の申請書2つを共有します。みなさんで切磋琢磨して「採用」を目指しましょう!



*工学系科学>土木工学、社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野>防災工学関連 の区分で出しました。ちなみに専門は防災工学で出しています。





 ということで今回は海外挑戦の申請書のコツを紹介しました。

簡単に要点をまとめると、

◯ 申請書のページ数が少ない分、訊かれていることに忠実にコンパクトに答えて書く
◯ 結局、なぜ海外でその研究をやるの? 何の意味があるの? どうしてそこ・その人の所に行くの? に対する答え

 を明確にすることが何より大事です!  




 今後要望や質問などがあれば、細かい失敗事例や経験則を出していきたいと思います。


 また、あくまでここで紹介しているのは、こて先というか見栄えがよくなるような 文章のテクニックにすぎないので、実質言葉を錬磨するのはあなたや指導教官とのやりとりですので、しっかり考えてください!


 じゃないと、見た目だけの中身ない申請書だなと手抜きがバレますよ!


 それでは皆さん、健康に気をつけてお過ごしください!





・その他

多分気になるであろう以下の質問。以下質問と回答は、海外挑戦の遵守事項及び諸手続の手引きより。


問)滞在費はいつ振り込まれるのか。

原則として、渡航後に提出する半券又は渡航を証明する書類を本会で確認してから、3週間

~1か月後に振り込みます。ただし、年度末又は年度初め等で振り込みが集中する時期には、振り込み時期が前後することがあります。また、必要な書類を提出期限までに提出しない場合には支給が遅れることになるほか、提出されるまで支給停止の措置を執ります。


問)若手研究者海外挑戦プログラムの支給経費は「給与」にあたるのか。

回答)採用者と本会とは雇用関係がないため、いわゆる「給与」にはあたりません。本会から支給している経費は、海外に滞在するための旅費(滞在費・往復航空賃)及び実費(ベンチフィー)です。


問)一時帰国はどうしても認められないか。

回答)原則一時帰国はできないこととしておりますが、派遣開始後やむを得ない事情により一時帰国を希望する場合は、本会宛てご相談ください。


 細かいところや気になる点は学振の担当に連絡するのが一番だと思います。







◯参考書、というか研究を通じた僕のバイブル

・宮野公樹:研究を深める5つの問い-「科学」の転換期における研究者思考-, 講談社, 2015.


研究者になるためには研究が一番に大事!と何だか無思考・無目的に実践してはいないか?そもそもなぜ私たちは研究し、論文を書くのか、誰や何と戦っているのか、研究者としての自分自身やそのマインドを鍛えているのか? とても根本的でわかりやすい文章だからこそ、真に研究者を目指したい若手の人にはグサグサと刺さる本です。

 
 
 

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